激安【ネット印刷】とは?概要と制作・印刷に関わる基礎知識

当事務所ではデザインのみで印刷はしませんが、印刷に関する情報をお届けします。

印刷するには様々なニーズがあります。
店舗をオープンするのに近場にお知らせチラシを配りたい・開業するのに名刺を作りたい・営業に使ったり店舗に置いたりしっかり会社(事業所)の会社案内を作りたい・事業のイベントやキャンペーンを告知する広告を作りたい・DMで集客を計りたい・行事時期だからのぼり旗を作りたいなど、様々です。

近場の印刷会社にお見積もりを取ると高額だな、と思いませんか?ここでご紹介したいのがネット印刷というサービスです。
近年、このネット印刷というサービスが人気で利用者も多いです。


概要/メリットとデメリット

メリット

ネット印刷は、ネット上で印刷依頼ができるサービスなので全国対応、注文・データ納品が24時間できます。近場の印刷所と比べるとわかると思いますが、価格がとても安いです。
印刷用のデータを作成したらそれをサービス会社のホームページからアップロードし楽々データ入稿できます。サービス会社はそのデータを元に印刷をし、チラシやパンフレットなどをお客様指定の住所へ郵送するといった流れです。(サービスによってはその会社に取りに行くという選択もできます。)
印刷の種類も幅広く注文でき、チラシ・パンフレット・ポスター・冊子・名刺・DMなど基本的な媒体以外にも、Tシャツなどのノベルティ/グッズ印刷も受け付け可能な会社もあります。

デメリット

印刷物の色の具合に細かくこだわる方には、細かい調整対応しないためデメリットに感じるかもしれません。(と言ってもネット印刷の出来が悪いわけではありません。普通に綺麗に仕上げてくれます。)色に強くこだわりたい場合は、料金が高くなっても構わないなら近場の印刷会社に相談してみた方が良いでしょう。実際の紙と印刷機で試し刷りをする「色校」というサービスを利用して調整してください。
(色校をしてくれるネット印刷サービスもあります。しかし、近場の印刷会社より、やり取りの時間はかかるでしょう。)

逆に色の仕上がりに細かくこだわらなくてなるべく安くしたい、時間に余裕があるという事でしたらネット印刷が断然おすすめです。

あと私の経験になりますが、最初はあるネット印刷を利用していたのですが2回印刷不備がありそこは利用しなくなりました。先方に確認したら、ネット印刷は検版(刷り上がりでおかしいところがないか?を確認する作業)をしないのです。印刷したらすぐ箱詰めするようです。格安だから注文量が多い分量をこなさなければいけないので、検版する時間を省いてるんだと思います。滅多にないことですが、近場の印刷会社より失敗があると思います。
戦法が失敗した場合は、証拠の刷り上がりを送り返して再度刷り直し(もちろんこの分は無料)になりましたが、時間と手間がかかりました。

ネット印刷ご利用前の基礎知識

次にネット印刷を利用するにあたって、なるべくスムーズに進行・納品できるように、わからなかったりミスしたりしがちな点を確認していきましょう。

どのようなデータをネット印刷サイトへ渡せば良いか?

印刷注文するには印刷用データを作成して入稿しますが、データはどのソフトで作成したものが良いのか、初めての方はわからないので下記をご確認ください。ただし保存データ形式が当てはまらないサイトや適用できない印刷種類もありえるので各公式サイトでご確認ください。

ネット印刷用の入稿データ

・illustrator ・Photoshop ・InDesign ・word ・powerpoint ・PDF

自分で作成できるオンラインデザインサービスという機能があるネット印刷もありますが、そのサービスの利用は断然おすすめできません。デザイン経験のあるデザイナーにちゃんとしたものを作成してもらいましょう。

印刷に使う「紙」について

用紙についてです。印刷に一般的に使われる用紙はどのようなものがあるのでしょうか?
お見積もり確認や注文をする際に印刷にしようする紙のサイズ・種類・厚さを選ぶことになります。初めての方だとわかりにくいので以下を参考にしてください。

紙のサイズ

基本はA0〜7サイズ・B0〜8サイズがあります。よくA4サイズなど聞いたことはあると思いますが、これは規格によるもので、Aは国際規格、Bは国内の規格でサイズが決められている用紙サイズになります。チラシにはA4やB4サイズが多く使われ、ポスターなら大きいサイズのA1など、それぞれの用途でサイズも変わります。

A0(841×1189mm)
B0(1030×1456mm)
A1(594×841mm)
B1(728×1030mm)
A2(420×594mm)
B2(515×728mm)
A3(297×420mm)
B3(364×515mm)
A4(210×297mm)
B4(257×364mm)
A0(841×1189mm)
A1(594×841mm)
A5(148×210mm)
B6(128×182mm)
A6(105×148mm)
B5(182×257mm)
A7(74×105mm)
B7(91×120mm)

またこれら定まった規格サイズ以外にも自由な数値で作る変形サイズがありますが、ほとんどのネット印刷サイトでは対応しています。

紙の種類

紙の種類は印刷会社やDTPデザイン職以外の方はほとんどわからないと思います。よく使われる基本的な紙をご紹介します。

・コート紙

白色鉱物性顔料が塗られていて光沢のある用紙です。よくポスティングされているチラシ(特にスーパーのチラシ)などに使用されています。

・マットコート紙

コート紙の塗工量を抑えたものでギラつきもなく落ち着いた雰囲気があり、色の彩度が映えます。しっかりと品良く見せたい会社案内の折パンフレットやリーフレットなどにもおすすめです。

・上質紙

化学パルプ配合率が100%で化学塗工がない上級用紙です。コートされていないので記入しやすいのでそういう目的の印刷物に利用した方が良いと思います。記入欄があるチラシ・DM・名刺などにおすすめです。

紙の厚さ

厚さの単位はkg(キログラム)になります。これは紙が薄すぎて数値として表示しにくいので、1000枚集めた重さ(連量)で定義しています。数値が大きいほど厚みもあることになります。
例えば、多数印刷して配布するチラシだから薄めで良いという場合58kgや73kg、会社案内なら重みのある・厚みのある135kgと使い分けます。と言っても初めての方はわからないと思うので、印刷前に知っておきたく時間のある場合は、ネット印刷サイトによっては紙のサンプルをもらえるので請求して実際に紙を手にとって厚みを確認してください。

印刷用データの基本

ネット印刷の各社(サイト)によって入稿データの制作規定は色々ありますが、印刷物の基礎的な入稿データの知識を解説します。プロデザイナーに依頼しないで、ご自身で制作する場合は基本的な知識はつけるべきなのでご参照ください。

仕上がりサイズとアートボード

(ここでは例としてA4サイズチラシを制作する場合とします。)

(例) illustrator CS5の場合

Illustratorで新規ファイル(アートボード)を作成します。(仕上がりサイズではなくトンボを含めた印刷が全部入る一規格大きいサイズです。「トンボの説明は下記をご参照ください。」)
A4サイズ(210mm×297mm)を「仕上がりサイズ」にしたいので、それより大きいB4サイズ(257×364mm)を「アートボードサイズ」とします。カラーモードは印刷物はCMYKを、ラスタライズ効果も高解像度を選択します。

トンボ

そのファイルのアートボードの天地左右中心へ仕上がりサイズ(210×297mm)のオブジェクトを配置し、トンボを作成。
下図をご確認ください。

「トンボ」とは図内で赤丸で囲った部分になります。これは、その印刷物を仕上がりサイズに断裁する(切る)ための目印の役割を持っています。つまりトンボは印刷をするにあたって重要な指標となります。

下図内の赤の点線が仕上がりのA4サイズになるわけですが、実際デザインするのは青点線までです。なぜかというと、印刷は完璧に赤のラインをズレなく捉えられるわけでなく2・3mmのズレも考慮し、データは仕上がりサイズより3mmはみ出させておく必要があるからです。この仕上がりラインより外に3mm多い部分を「塗り足し」と言います。余談ですが年配のデザイナーなら「ドブ」と呼ぶ場合もあります。
この断截ズレを考慮することから文字が仕上がりサイズに入らなくなることも考えられるので文字やカットされたくないデザインは仕上がりサイズより3mm内側(図で言うと緑点線)までに納める必要があります。
つまり仕上がりラインより外に3mm大きく作成し、仕上がりラインより3mm内側に文字を納める。といった決まりがあります。

(ネット印刷ではこのトンボが設定されていて、ラインを示したテンプレートデータを用意してくれているサイトもあります。わざわざこちらで一から作成しなくても既に要されているので活用しましょう。)
印刷されたら最終的に赤点線の仕上がりラインに沿って断截されます。
ネット印刷の中にはオンラインデザインができるサイトがありますが、あらかじめ枠が決まっているのでトンボはありません。仕上がりより3mm以内に文字を入れないよう気をつけつつ、そのまま直接テンプレートを利用して制作しましょう。

カラー設定

グラフィックソフトillustratorやphotoshopやIn Designを使用する場合

基本的にカラー印刷はCMYKの色の重ね合わせになります。C(シアン:水色)M(マゼンダ:ピンク)Y(イエロー:黄)K(キープレート:黒)の4色の版をつくります。CMYKは各々のそれぞれの色の名前の頭文字をイニシャルとして名付けてあります。そして各々の版にインクを流します。(モノクロなら白か黒の%です。黒90%や50%など)1色流し込んでは乾かし、さらに1色流し込んでは乾かしという工程になります。白黒印刷がカラー印刷より安い理由は、K(キープレート:黒)の1色の版だけなので残り3版分作らなくて良いのでをコストを抑える事ができます。さらに、大量部数印刷が単価が安くなるのも、量が増えれば1版に対してのコストが下がるからです。

制作の際はデザインソフトのillustratorやphotoshop上では、色を指定する際は間違えてRGBにしないように注意しましょう。(逆にネット上のWEBサイトやバナーなどはRGBカラー設定となります。)
またここでご注意ですが、このC100 M100 Y100 K100中で色の掛け合わせの合計値は300以下などの規制がある印刷会社がほとんどです。インキ量が多すぎるとそれだけ濃くなり、裏写りの原因になるので各印刷会社の規定にそって作成しましょう。(例:ネット印刷ラクスルでは計300%以内)

wordやpowerpointを使用する場合

こちらのwordやpowerpointはofficeソフトで元々印刷専用のソフトではありませんが受注可能なネット印刷や印刷会社が増えています。
カラーモードはR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)になります。このRGBは印刷用のCMYKとは違いWEB用の色になります。wordやpowerpointではこのRGBをCMYKにすることはできないのでデータを入稿後、印刷会社の方でCMYKの印刷に変更して印刷します。
ここでポイントですが、このデータをCMYK印刷され納品され色を確認した際に依頼者は「色が落ちた」「入稿前よりくすんでる?」など感じるケースが多いです。これはRGBカラーはCMYKカラーより色の領域が広いので色をCMYKへ変換した際に色の領域が多少狭くなるのが原因です。CMYKで変換できない領域の色は近くの色に変換されます。特に鮮やかでカラフルな色合いは差を感じやすいです。
ですので、モニターの色はあくまで目安で仕上がりとは違い色が沈むということを念頭に使用・印刷依頼するようにしてください。

画像データ

前述したように印刷物の色は基本的にRGBではなくCMYKモードにする必要があります。
通常でデジカメなどで撮影したデータはRGBなど印刷に適してないカラーモードになっています。photoshopなどのグラフィックソフトでそのデータを開いて、CMYKモードに変換します。wordやpowerpointは元々RGBでCMYKに変換できませんが、印刷会社で変換してくれます。

さらに、カラーモード以外に大切なものが「解像度」です。
これはそのデータの画質を表しています。解像度が低いと画像が粗(あら)く見え、高いとくっきりシャープに見えます。画像データは点の集まりのビットマップデータになります。(逆にillustratorのデータは点と点を線で結んだベクトルデータになります。ですのでillustratorのデータはいくら大きくしても画質が落ちることはありません。)

解像度が低い 一定の範囲に点の集まりが少なく過疎状態になるので画質が粗くなる。
解像度が高い 一定の範囲に点の集まりが多い密状態になるので画質が良くなる。

解像度の単位は1インチにどれほど点があるかを表していてこの数値が高いと高解像度となります。
基本単位はdpiで表し、印刷物には高解像度のデータが必要で350dpi(pixel/inch)〜となります。(逆にWEB用のデータなら72dpiと低くてもOKです。)

そのため、画像を用意する場合は高解像度のものにしてください。

  • ご自身でデジカメで撮影したデータを使用する場合、説明書やネットなど参照して高解像度設定をしてピンボケや逆光などには気をつけて撮影してください。
  • 素材データを取得できるサイトからダウンロードする場合、S・M・Lなどサイズがありますが余裕のある大きいサイズを選択しましょう。

(※他の画像を無断で利用すると著作権の問題になるので、正式に認められた画像提供サイトから使用規約をしっかり確認して許される範囲で使用してください。)

画像配置後の注意すべき点ですが、画像をソフト上に普通に配置すれば100%の大きさですがこれを120%などに大きく引き伸ばすとその分、画質が粗くなりますのでなるべく避けましょう。せいぜい110%くらいにしましょう。逆に90%など小さくする分には問題ありません。
ポスターなど大きいサイズにする場合、なるべく大きい高解像度サイズを配置しても110%以上引き伸ばさなければ行けない場合は仕方ないのでそれ以上に引き伸ばしましょう。「手にとって至近距離で見るチラシなどはなるべく高めの解像度」で意識していきましょう。

PDFデータによる入稿(データ納品)

印刷用データとなるとillusratorやin designなどのデザイン専用ソフトがメインでその他に受注会社によってはwordやpowerpointなども受け付け可能です。昔はPDFデータによる入稿はなかったのですが今やPDFデータでの入稿が主流になってきました。これはネット印刷だけでなく普通の印刷会社でも言えることです。また他のソフトに比べてPDFデータの方がトラベルが少なく印刷会社からも推奨されています。

PDFデータとは?

『Portable Document Format」の略で作成されたデータをそのままあらゆる環境のPCで表示印刷できる画期的ソフトでです。illustratorやpowerpointなどからPDF形式に保存できます。PDFは昔は原稿や校正用でメールに添付したりのソフトでしたが現代では印刷用データにまでできる性能になりました。
読み込むのにAcrobat ReaderというPDFを表示できるソフトがあれば開いて確認できます。このソフトはお使いのPCにないケースも稀にありますが、今のパソコンにはほとんど最初から付いているソフトです。パソコンにない場合でも無料ダウンロードでインストールすれば使用できます。


折り・その他の「加工」について

印刷物は基本的に輪転機で直接印刷、もしくは仕上がりサイズより大きいサイズの用紙に印刷して断截し仕上がるわけですが、それに加工をつける場合があります。

折り加工

様々な折がありますが、よく使われる基本的な折り加工は「2つ折り」「巻き3つ折り」です。サイズによりますが主にパンフレットやポスティング用に使われ多めの内容を入れ込むことができて、折った分サイズも小さくなるので手に取りやすいです。ネット印刷でもこの折りオプションはあるので必要に応じて利用しましょう。

PP加工

表面(雑誌や本など)に使われる加工です。ポリプロピレンフィルムで光沢感があり湿気などに強く耐久力もあります。

ラミネート(パウチ)加工

印刷物1枚に対してPETフィルムで表裏から圧着する加工です。対し性、耐久性に優れます。


塗り足しをつけること、色はCMYKにすること、写真など画像を使用する場合は解像度には気をつけることを念頭に印刷を依頼しましょう。